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5.いざろ(笊)
吉野の人々は昔から『いざろ』(笊)を作っていた(木曽谷でも吉野独自の伝統工芸)。笊を作る材料は、『篶』(スズ)と言う
直径5〜6mm、長さ約2.5m前後の竹の仲間の植物であり、信濃国の枕詞に『美篶かる』とあるあの「すず」である。吉野の
近くで篶の生えている場所は大概御科林の中の大木の林の下にあり、駒ヶ岳につながる前山の中腹に生えている。
 
(1)篶刈り
篶の刈り取りは農作業の終わった霜月の初め頃で、朝二時頃提灯を付けて出掛ける、お宮の前を通り深沢から西久保に
上がり、東野へ下って阿弥陀堂の前を過ぎて、荻原沢に向かう。阿弥陀堂の銀杏の葉っぱが黄色く落ちかけているころだ。
荻原沢を渡るとすぐに急な尾根筋にでて山の小路はだんだんと険しくなってくる。途中には昔、篶を背負ったまま人が落ちた
と言う忠助落としなどと言う所もあり、木の根につかまったりしながら這い上って行く所もある。標高約1600〜1800メートル位
の位置になると、ブナ、ミズメ、栂、シラピソなどの樹林帯になって来る、幹に白っぽい苔がぶら下がった木もある、この辺りに
着くと漸く夜が明け始め空が明るくなって来るころ漸く篶の密生した場所に到着する家を出てから3〜4時間くらいたっている。
大きな味噌むすぴを食べて一服しすぐに刈り取り作業を始める。《写真a》
 
篶は足の踏み場が無いくらい密集して生えている《写真b》、余り広範囲に移動しなくても刈り取れる。3〜4時間で直径
25〜30センチくらいの束を二束刈り取り背負いやすく縛る。ブナ林の間に見える眼下遠方は倉本から須原の方角だ。
下の方には、陣が平ら(昔の戦の跡)桟澤(昔の木曽道に掛かったいた本当の桟)の辺りが望遠できる地点である。
木曽古道はこの『まめざ』(豆沢か?)の下の方を通過していたと思われる。 
 
上の方には『ソバ坪』と言う地名の場所があり、大昔その辺りまで伊那へ越す道を明けた跡が残っているらしい、また吉野の
人などがクランボ(羚羊)の罠をかけに行っていたらしいところがある。また伊那へ向けて道を明ける予定で、道を
作りかけた跡があったらしい。
10時ころには帰り支度をして、篶を横に背負い、ほぼ横歩きの状態や後ろっさにになったりして、尾根を下る。来たときのよう
な速度では歩けない、一歩一歩ゆっくりと下る。古道跡付近であらしを下り、おいわら沢を渡って阿弥陀堂に着く、真っ黄色に
なった銀杏の大木の横を通り過ぎて一服する。東野まで下ると、ほっとする。
 
荻原沢を過ぎてからは普通の前向きに歩けるようになり、歩くのがわりと楽になる。途中で分渡沢を渡ると林に入り、
西久保への上りになる。平らな西久保のススキ原を横切リサンドの沢への下りにかかる、道沿いには水成岩の転石の中を
きれいな小沢が流れ下っている。三渡沢(小さな沢が三つ合流して深沢になっている)の手前で荷を下ろし、少し横に入り
ズミの木(ハダンキョ<らいの大きさで猛烈に酢っぱい、スズキ漬けの素にする果実)の元で落ち葉をかき分けズミを拾う。
 
三渡の沢は、石灰岩、花崗岩、水成岩の転石が混じりあっている。三渡から猿鼻の前後はガレバが多く、道は急斜面の中
腹を横切るので横歩きだ、午後三時頃熊野権現の下を通り掘りを経て漸く家に辿り着く。十二時間連続の重労働だ。
笊を沢山作る家や、年中作る人の家では篶の刈り取り作業を幾日も続けなければならないので、大変な件業であった。
 
記事:
山の奥深くへ取りに行く、篶(スズ)刈りは十二時間連続の重労働で本当に大変な作業だったんだね! 
 
オレは子供で参加することは無かったが、東野(ト-ノ)までは東野に親戚があったので、小学校低学年頃から何回も行った
ことがあり、ここに記述の吉野から東野までの古道はよく知っている。 全体的には平らの道で子供でも歩けたが二箇所ほど
子供1人では厳しい箇所があった、1箇所は地名は忘れたが(バーホトコロ?)、崖が崩れている箇所があり、人1人がやっと通
れる道はあるが見上げると50mほど絶壁で今にも落ちてきそうな岩がゴロゴロしていた、ここを通るのは何時も怖かった。
2箇所目は、西久保の原っぱの直前が凄く急な坂道で、30分ほど掛かってハァハァ息を切らして登ったのを覚えている。
 
この坂を上りきると、西久保から東野間は下り坂が続いているが(帰りは上り坂)、特に急な坂ではない。なお、東野からは
本格的な登山道ですが、篶(スズ)刈り場の途中まで親父に連れられてキノコ取りにいったこがあります。キノコは腐った大木
に採りきれないほど生えており、ヌルヌルしていた記憶はあるがキンコの名前は覚えていない。
 
<a.木曽古道 別ルートの地図>

 此処に記述の、吉野から西久保に行く古道は、吉野-集りや
(風越山)-西久保の木曽古道とはルートが異なります。
 
バーホトコロの崖道を通るのが近道ですが、第2章の木曽古道
にも出てこない?、もちろん一般的に言う風越山経由
の木曽古道も何回か通ったことはあるが、吉野の人は
普通ここに記載の篶刈りのルートを通りました。
 
なお、この別ルートは今でも通れるか不明です。もし地図を見て
トライしたい方は、役場の観光課などに聞いてからにして下さい。


 
<b.篶(スズ) スズタケの写真>


 
すず たけ 【篶(スズ)竹】
 
山地に群生するササの一種。高さ2メートル 内外となり,
各節から一個ずつ枝が出る。葉は披針形で,枝端に数個つく。
 
スズダケ。スズ。ミスズ。


 
 
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